応募が集まる求人票を作る方法
〜「募集文」ではなく「共感文」を書こう〜
「求人を出しても応募が来ない」
「応募はあるけど、ターゲットとズレている」
多くの企業が抱えるこの悩み。その原因の多くは“求人票の設計”にあります。
求人票は単なる募集文ではなく、採用戦略の出口であり、候補者との最初の接点です。
ここに戦略性がなければ、どれだけ採用媒体に掲載しても成果は出ません。
「誰を採りたいか」が言語化されていない
まず押さえておきたいのは、求人票は「欲しい人を書けば来る」ものではないということ。
実際には、「誰を採りたいか」が曖昧なまま書かれているケースが非常に多いです。
「即戦力」「自走できる人」「チームワークを大切にする人」——よく見る表現ですが、これはすべて“採用側の願望”です。
候補者が読んでも、自分がその人物像に当てはまるかどうか判断できません。
求人票に必要なのは、「こういう経験を持つ人が、こういう環境で力を発揮できる」という具体的な文脈です。
たとえば、
「立ち上げ期の営業組織で、自ら仕組みを作ることにやりがいを感じる方」
「バックオフィス全般を一通り経験し、幅広く関わりたい方」
といった具合に、職場の“今”と“求める役割”をセットで伝えることが重要です。
求人票は「ターゲット設定」から逆算する
応募を増やすには、まずターゲットを明確に定義すること。
「年齢層」「キャリア段階」「転職理由」「働き方の希望」などを整理すると、言葉の選び方が変わります。
たとえば、
- 20代の転職初心者に向けて書く場合:「未経験でも挑戦できる」「一緒に成長できる」
- 30代経験者に向けて書く場合:「裁量を持って意思決定できる」「事業を動かす役割を担う」
同じ仕事でも、ターゲットによって響くメッセージはまったく違います。
求人票は“誰に話しかけるのか”を決めてから、“何を伝えるか”を設計するものです。
「条件」ではなく「価値」を伝える
求人票で最も読まれる箇所は「仕事内容」よりも「募集背景」と「会社紹介」です。
ここに“会社のストーリー”がなければ、応募者の心は動きません。
多くの企業は「業務内容」「応募資格」「勤務地」といった条件だけを整然と並べます。
しかし、人が応募を決めるのは条件ではなく、自分の価値観との一致です。
「私たちは、まだ小さい組織だからこそ、ひとりひとりの意見を形にできる環境です」
「制度づくりの最初のフェーズに関われます」
こうした“候補者にとっての価値”を言語化することで、求人票は一気に“共感文”になります。
成功している企業の求人票は「現場の声」でできている
採用支援をしていると、応募が集まる企業ほど、現場の社員インタビューを丁寧に行っています。
たとえば、
- 実際に入社した社員はなぜ応募したのか
- 入社後に感じたギャップは何か
- どんな瞬間に「この会社でよかった」と思ったか
こうしたリアルな声を取り入れると、文章に「温度」が生まれます。
たとえ派手な表現がなくても、“自分の言葉”で語られた求人票は必ず届きます。
応募が集まる求人票の3つの構成ポイント
- Why:なぜこの募集をしているのか(背景)
→ 事業の成長段階、組織課題、挑戦テーマを簡潔に。 - What:どんな仕事を任せたいのか(役割)
→ 具体的なミッション・1年目のゴールを提示。 - Who:どんな人と働きたいのか(人物像)
→ スキルよりも価値観・スタンスを明示。
この3点が整理されていれば、媒体やフォーマットに関係なく「伝わる求人票」になります。
「求人票は最後に書く」が正解
採用計画を立てるとき、最初に求人票を作る企業が多いですが、実は逆です。
求人票は「採用戦略の“最後に出てくるアウトプット”」です。
採用目的、ターゲット設定、採用チャネル設計、面接方針が整理されて初めて、「どんな言葉で伝えるか」が決まります。
求人票とは、戦略の翻訳書です。
戦略がなければ、どんなに言葉を磨いても届きません。
おわりに:求人票は“企業の人格”を映す鏡
応募が集まる求人票には、その会社らしさが滲み出ています。
飾らず、誇張せず、でも誠実に語ること。
それこそが、いまの採用市場で最も信頼を得る方法です。
求人票は“書くこと”ではなく、“設計すること”。
言葉を変えるだけで、採用の未来は確実に変わります。


