“惹きつける面接”を設計する方法
〜「選ぶ場」から「共感を生む場」へ〜
採用活動において、面接はもっとも大きな分岐点です。
どれだけ母集団が集まっても、面接で魅力が伝わらなければ採用は決まりません。
にもかかわらず、多くの面接は「評価の場」で終わってしまっています。
惹きつける面接を設計するために必要なのは、質問のテクニックではなく“体験設計”の発想です。
面接を「見極め」から「共感形成」のプロセスに変える。そのための具体的な方法をお伝えします。
1. 面接を“体験”としてデザインする
候補者にとって、面接は「会社を体感する最初の接点」です。
その時間で感じた“印象”が、入社意欲を大きく左右します。
まず考えるべきは、「この60分でどんな体験をしてもらいたいか」。
たとえば、
- 自分の話を丁寧に聞いてもらえたと感じる
- 会社や仕事のリアルが具体的にイメージできた
- この人たちと働いてみたいと思えた
こうした感情設計ができていない面接は、どんなに質問を重ねても「印象に残らない」時間になります。
“惹きつける面接”とは、言葉ではなく体験で会社を伝える場なのです。
2. ストラクチャード面接+エンゲージメント要素のハイブリッドにする
惹きつけと見極めを両立するには、構造化された面接が基本です。
評価基準や質問項目をあらかじめ整理することで、面接官ごとのばらつきを減らします。
しかし、構造化だけでは「冷たい印象」になりがち。
そこで重要なのが、“エンゲージメント要素”を組み込むことです。
具体的には、
- 質問の合間に「なるほど、それはどう感じたんですか?」と掘り下げる
- 面接の中盤で「うちのチームではこんな働き方をしています」とリアルを共有する
- 終盤では「この仕事のやりがいと難しさ」を率直に話す
これにより、「会社が自分に興味を持ってくれている」と感じられる面接になります。
つまり、構造化と共感形成を二層構造で設計することがポイントです。
3. “惹きつけ”の鍵は「面接官の一言」にある
惹きつけに最も影響を与えるのは、制度でも給与でもなく面接官の態度です。
候補者は、質問内容よりも“面接官の一言”を記憶しています。
「これまでの経験がうちでも活かせそうですね」「あなたの考え方、うちのカルチャーにすごく合いそうです」——
たった一言でも、相手の中で“承認”として残ります。
逆に、評価的・上から目線の言葉は、モチベーションを一瞬で下げます。
面接官には「見極める役割」と同時に「惹きつける営業担当」という意識を持ってもらうことが重要です。
4. 面接官トレーニングを“定量化”する
多くの企業が「面接官教育はしたことがない」と話します。
しかし、惹きつけ型の採用を目指すなら、面接官のスキルを定量的に設計することが不可欠です。
たとえば、以下の4観点で自己評価・フィードバックを実施します。

これを採用チーム内で共有し、改善のPDCAを回すことで、面接の質は確実に向上します。
5. “惹きつける面接”を実現する3ステップ
最後に、実践に落とし込むための3ステップを紹介します。
- 設計:面接の目的と体験ゴールを定義する
→ 「候補者に何を感じてもらいたいか」をチームで明文化。 - 構築:質問設計+エンゲージメント要素を組み込む
→ 評価項目ごとに質問を整理し、“共感ポイント”を配置。 - 検証:面接後アンケート・辞退理由を分析する
→ 辞退者の声から「面接で何が伝わらなかったか」を明らかにする。
この3ステップを回すことで、面接が単なる“選抜の場”から“惹きつけの場”へと進化します。
おわりに:面接は最高の採用広報
面接は、候補者にとって“企業の人格”を感じる瞬間です。
採用ページより、説明会より、面接の1時間が最も印象に残ります。
だからこそ、面接は「評価プロセス」ではなく「共感形成プロセス」として再設計すべきです。
惹きつける面接とは、スキルではなく姿勢。
相手を選ぶ前に、「相手に選ばれる場」をどう作るか——そこに、これからの採用の未来があります。


