面接の場が「お見合い」ではなく「一方通行の尋問」になってしまう問題

採用面接の現場で、こんな光景を見かけることがあります。
面接官が履歴書を手に取り、「なぜ前職を辞めましたか?」「当社を志望した理由は何でしたか?」「あなたの〇〇業務における強みは?」と質問を重ねる。
候補者は一問一答のように答える。
その間、面接官はメモを取りながら淡々と頷くだけ——。

形式としては面接でも、実態は“尋問”のような時間。
候補者が緊張し、会社の魅力も伝わらない。
結果、「悪い印象ではなかったけれど決め手に欠ける」「相手から辞退された」……そんな事例は少なくありません。

面接が「一方通行」になる背景

なぜ面接がこうした形になってしまうのでしょうか。
一番多い理由は、おそらく「評価すること」に集中しすぎているからです。

面接官は「見極めなければ」というプレッシャーを感じています。
短い時間で相手の能力・適性・カルチャーフィットを判断しなければならない。そのため、どうしても質問中心の“詰問型”面接になりがちです。

また、現場のマネージャーが面接に入る場合、採用のトレーニングを受けていないことも多いです。
その結果、「良い質問」よりも「聞きたいことを片っ端から聞く」というスタイルになり、候補者からすれば「答えるだけの時間」に感じられてしまうのです。

面接は「選ぶ場」であり「選ばれる場」

ここで忘れてはならないのが、面接は企業が候補者を選ぶ場であると同時に、候補者も企業を選ぶ場であるということ。

優秀な人材ほど、複数の企業を並行して受けています。
その中で「自分を理解してくれた」「話を丁寧に聞いてくれた」と感じる会社に惹かれやすい。
つまり、面接での印象がそのまま「入社意欲の差」につながるのです。

ある採用支援先の企業B社では、面接後に辞退が相次いでいました。
フィードバックを聞くと、候補者からは「質問ばかりで、会社の雰囲気が分からなかった」「話を遮られてしまった」といった声が多数。

そこで、面接官トレーニングを実施し、質問中心ではなく“対話形式”に変えたところ、内定承諾率が3割以上アップしました。
「話を聞いてくれた」「価値観が合いそう」と感じてもらえるだけで、印象は大きく変わるのです。

対話を生む面接のポイント

①「会話の最初の3分」を整える

面接冒頭でのトーンが、その後の空気を左右します。
アイスブレイクとしても最近は有名ですね。
形式的な挨拶だけでなく、「今日は来てくださってありがとうございます。リラックスして話してくださいね」といった一言を添えるだけでも、候補者は安心します。

②「質問の連続」ではなく「テーマごとの対話」にする

「前職ではどんな仕事をされていましたか?」→「それをやる中で工夫した点は?」→「それが今の仕事にも生きていそうですね」
というように、質問を“つなげる”意識を持つと、自然と会話が生まれます。

③候補者からの質問時間を十分にとる

面接の終盤で「最後に何か質問は?」と形式的に聞くだけではもったいない。
会社側からも「よく聞かれる質問」や「現場社員の声」などを共有することで、双方向のコミュニケーションに変わります。

面接官の「姿勢」が印象を決める

もう一つ大切なのは、面接官の“姿勢”です。
候補者を評価する立場である一方で、「対等なパートナーとして関心を持つ」意識を持てるかどうか。

面接の目的は「ふるい落とすこと」ではなく、「共に働ける人を見つけること」です。
その姿勢が伝わる面接では、たとえ不採用になっても、候補者は「この会社は誠実だった」と感じ、再び関わりたいと思ってくれることがあります。

おわりに:面接を「惹きつけの場」に変える

採用活動において、面接は最も重要なタッチポイントです。
にもかかわらず、「話を聞く」よりも「質問をする」ことに偏ると、せっかくの出会いが機会損失になってしまいます。

候補者を見極める場でありながら、同時に会社を知ってもらう場。
そのバランスを意識するだけで、面接の時間は単なる評価の場から、“惹きつけの場”へと変わっていきます。